こんにちは!管理人のハルです。
今年8月、パナソニック株式会社から「家電の操作をサポートする”アタッチメントチップ”の3Dデータ公開」のニュースが入ってきました。
この”アタッチメントチップ”は、既に持っている家電に貼るだけでボタン位置がわかるようになる後付けのチップです。インクルーシブデザインの理念に基づき、誰もがより快適に家電を使えるようになることを目指し作られました。

この記事では、アタッチメントチップの概要や利用方法についてまとめてみました。
アタッチメントチップとは?
アタッチメントチップとは、パナソニックが公開したフラットで押しにくいボタンに取り付けることで、触覚的な目印を加える補助ツールです。

近年、家電は進化し一台で様々なことが可能になりました。一方で、操作に必要なボタンやスイッチの数も多くなり、家電の操作を覚えるのが困難な方や見えにくさがある方、育児中の方で子どもを抱っこしているとボタンが見えず操作できないといった困りごとも…。

そこで開発されたのが、この「アタッチメントチップ」です。よく使うボタンにアタッチメントチップを取り付けることで、操作に迷わずにすんだり、ボタンが見えなくても指先で押したいボタンが分かるようになります。新しい家電に買い替えたり、複雑な工事が必要なく、すでに使用中の家電に後から取り付けられるのが嬉しいところです。

チップの3Dデータは無料でダウンロード可能!
このチップは無料で3Dデータをダウンロードできるようになっており、誰でも3Dプリンターで出力・利用することができます。
基本的にパナソニック製調理家電製品の該当する品番*の操作部に付けることが想定されていますが、他社製品や品番に該当しないパナソニック製品でも、大きさをカスタマイズして使用することが可能です。
利用手順は、次の流れになっています。
【 利用手順 】
1、取り付けたい家電のボタンサイズを測る
2、COCRE HUB(コクリハブ)で会員登録し、3Dプリント用データをダウンロード(無料)
3、自宅または作業療法士をはじめとするCOCRE HUBのコラボレーターに相談し、3Dプリンターで出力
4、家電のボタン部分に両面テープで貼り付ける
5、動作確認する
*該当する品番
オーブンレンジ:NE-FS3C/電子レンジ:NE-FS3A/ビルトインIHクッキングヒーター:Aシリーズ、Sシリーズ、Bシリーズ、Cシリーズ/炊飯器:SR-V10BB、SR-M10B、SR-R10B、SR-UNX101、SR-AX1-W、SR-KT060/オートクッカー:NF-AC1000、NF-AC700-H
具体的な利用手順
ここでは具体的な利用手順を解説します。
1、取り付けたい家電のボタンサイズを測る
1-1、フレームタイプが選択可能かを判断するための計測を行う
アタッチメントチップには、フレームタイプとタイルタイプがあります。

貼り付け先に一定の面積が必要なため、まず家電の操作部の①~③の部分を計測し、以下の条件を満たす場合にはフレームタイプを、満たさない場合はタイルタイプを選択します。
【フレームタイプが使える条件】
① 貼り付け可能高さ:操作部のボタン近傍に、フラットで他の表示等にかぶらない貼り付け可能な高さが、26mm以上あるか。
② 表示幅:ボタン部分の表示(文字や記号)の幅が、18mm以下であるか。
③ 表示高さ:文字や記号だけでなく、そのスイッチの稼働状態が分かるランプがついている場合はランプの高さも含め計測し、14mm以下であるか。

1-2、ボタンピッチを測る
次にボタンピッチ(ボタンの中心から中心までの距離)を計測します。
22mm以上は”フレーム大”か”タイル長方形”を、15mm以上は”フレーム小か”タイル正方形”がおすすめです。(チップを横にして使用する場合も同様。)

1-3、記号の選択
チップには8種類の凸記号を選んで付けることができます。8つの記号の中から使いたいものを、ダウンロードデータから選択します。

スタートを〇、取消を×、増減を<・>や-・+にする…など、操作と記号のイメージが合致しやすいものを選びます。また、記号の大きさや線の太さは、指先の感覚に合わせて調整も可能です。
2、COCRE HUB(コクリハブ)で会員登録し、3Dプリント用データをダウンロードする(無料)
チップの形状の種類・サイズ・記号を選び終えたら、3Dデータをダウンロードします。ダウンロードは、COCRE HUB(コクリハブ)という外部サイトから行うため、まずは会員登録が必要です。
そのあと、アタッチメントチップのページからダウンロードしましょう。
3、自宅または作業療法士をはじめとするCOCRE HUBのコラボレーターに相談し、3Dプリンターで出力する
自宅に3Dプリンターがある方はそのまま出力が可能です。
もし自宅に3Dプリンターがないという方は、COCRE HUBのコラボレーターマップに、出力が可能な拠点が地図で表示されています。自宅近くにないか、ぜひ探してみてください。

4、家電のボタン部分に両面テープで貼り付ける
チップをプリントしたら、操作部に置き貼り付ける位置を確認します。このとき、次の点に注意します。
① チップの平らな面の部分が、ボタンの下方か横にくるようにする。フレームタイプは、ボタンとして押す部分がフレーム内に入るように配置する。
② 作動状況を知らせるランプがボタン近くにある場合は、ランプを隠さない位置にする。また、なるべく表示も隠さない位置にする。
③ 熱源のある製品(IHクッキングヒーターなど)に貼り付ける場合は、記号を確認する際に誤って熱源に手を近づけないよう、必ず熱源の手前側に記号がくるようにする。

貼り付け位置が決まったら、チップの裏面(記号のない面)の平らな部分全面に、すき間が無いように両面テープを貼り付けます。貼り付け先の汚れや水分をよく取り除いて、浮かないように上から押さえて接着します。

5、動作確認する
貼り付けが終わったら、以下の2点の動作確認をします。操作ボタンが作動しにくい、チップがずれやすい時は、貼り直すか、別のチップに交換しましょう。
① チップを貼っても操作ボタンが正常に作動すること
② 指で触っても容易にチップがずれないこと
これで完成です!
COCRE HUB(コクリハブ)ってなに?
ここで、アタッチメントチップを出力する際に会員登録する「COCRE HUB(コクリハブ)」について、補足解説します。

COCRE HUB(コクリハブ)は、3Dプリンタを活用した自助具のデータ共有と共創を推進するオンラインプラットフォームです。利用者や支援者、専門家、ものづくりに関わるすべての人が、「ともにつくり叶える」社会の実現を目指して運営されています。(引用:COCRE HUB HPより)
今回紹介したアタッチメントチップ以外にも、200種類以上の自助具作成データが保存されており、誰でも閲覧・ダウンロードすることができます。
▼HPはこちら
https://cocrehub.com/dl/767bfd
アタッチメントチップが作られた背景
今回の3Dデータ公開は、パナソニックが目指す「インクルーシブデザイン」の一環として、誰もが使いやすい製品を目指したものです。

近年、デザイン性からフラットな操作ボタンの家電が増える一方、視覚障がい者や高齢者、子育て中の人など、特定のユーザーからは「どのボタンか分かりにくい」といった操作の難しさが指摘されていました。そこで、パナソニックは多様なユーザーの意見を企画段階から取り入れ、この課題を解決するためにアタッチメントチップが開発されました。
▼参考:開発ストーリー
暮らしの変化に合わせて、家電も使いやすく変えてみる
年を重ねる・病気やケガをする・子供が生まれる。そうした何らかのライフイベントは、これまでの暮らしに変化を与えます。暮らしが変化したときは、周りの環境も一緒に変えてみることで、困りごとが解決できることも。
家電を丸ごと変えるのは、金銭的にも精神的にも負担が大きいかもしれません。でも、アタッチメントチップのように、”ちょっと操作しにくいな”と思ったときに、後付けで自分に合わせてカスタマイズできるものがあると、使い慣れた家電を使い続けることができますし、必要なくなれば外すこともできます。
そんな柔軟な変化を可能にするアタッチメントチップ、ぜひ活用していきたいです。
それではまた!