朝食を食べ終えると、コーヒーを淹れる準備をはじめる。
キッチンに立ち、冷蔵庫から豆の袋を取り出す。袋を開けると、ふわっと香ばしい香りが鼻をくすぐる。量った豆と水をコーヒーメーカーに入れて、スイッチオン。コーヒーメーカーは、結婚したときに友人からもらった愛用品だ。
「ブオーン」
しずか…とは言い難い音だが、豆を挽く音が部屋に響く。
その音を聞いていると、”ああ、今日も一日がはじまるな”と、身体がしゃんとしてくる。
しずかになった部屋から、今度は「ぽちょん」と音が聞こえはじめる。その音を合図に、子どもを送りに出かける。
家に戻ると、玄関に漂うコーヒーの香り。
コーヒーを淹れる時間は、何か生産的なことをしているわけじゃない。でもこの時間があるとないとで、自分の気の持ち方がまるで違うのだ。
“毎朝、同じマグカップでコーヒーを飲む”
わたしにとっては、これはただの”作業”ではなく、”気持ちを整えること”であり、日々の慌ただしさの中で”自分のためにできること”のひとつなのかもしれない。
サーバーに入ったコーヒーを、そっとマグカップに注ぐ。ほんのりと苦い香りが身体に染みわたってくる。
今日も一日が、ゆっくりとはじまる。

ー暮らしをつくる、今日の作業ー
「コーヒーを淹れる」